【短編小説】スーツケースに入っていたもの (opens in new tab)
人に言えないことを、菜々恵はスーツケースに入れてきた。 最初は、 手紙だった。 次は、日記や家族写真だった。 そして最後は―― 菜々恵は昔から、白い小さなスーツケースを一つ持っていた。 旅行のためではない。人に言えないものをしまうための箱だった。 それはクローゼットの奥、古い着物の和箪笥のそばにある。 菜々恵は何かを隠したいとき、いつもそこにしゃがみ込んだ。 母が昔、言っていたことがある。 「つらいことはね、箱にしまっておきなさい。外に出しておくと、だんだん大きくなるから」 母はそれ以上、詳しいことは言わなかった。 けれど、菜々恵はその言葉を妙に真面目に守ってきた。 最
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